「WEBライター」という仕事・職業はこの10年ほどでずいぶんと増えたイメージがあります。特に資格が必要なわけでなく、誰でも名乗れ、自身のブログに何か文章をアップすればそれも「WEBライター」です。しかし、実際に企業からお金をもらい質の高い原稿を作成できるライターが増えたかというとそうではありません。WEBライターが飽和状態になった今、記事制作業務を発注する側としては、質の高いライターをいかに確保するかは大きな課題です。そんなことを書いていきたいと思います。
WEBライターが飽和状態の今、質の高いWEBライターを確保することは、ビジネスの成功にとって不可欠な要素
WEBライター、という呼ばれ方が定着したのはいつごろからでしょう?10年くらい前、もっと前からでしょうか。「WEB」ですので、ライター業、原稿執筆といえば「紙上」だった時代を経て、「紙」ではなく「WEBサイト」に掲載される文章を書くことを主とするライターという意味合いで言われるようになったのだと思います。
今は「紙」よりWEBサイト向けのSEO記事制作業務などが多いと思います。これはクラウドワーク系のサイトを覗いてみてもわかります。案件の大半はWEBサイトに掲載する記事の制作です。紙の仕事はかなり少ない印象です。また当社にご依頼いただく案件も、WEBサイト向けのほうが比率としては高めです。企業のHP、ランディングページ制作、SEO記事編集、WEBサイトに掲載されるインタビュー記事、求人サイトの記事制作などは「WEBサイトのライティング」です。ただ当社は、書籍(紙)の編集、ニュースレター(紙)制作なども行っているため、紙の仕事も割合としてはまだ高いほうかと思います。
WEBライターが増えたことで変わったことはなにか?
さて、WEBライターが増えたことで市場はどうなったかというと、ライター仕事の単価の変化、「文字単価」という概念が定着したことなどありますが、「玉石混交になったな」というのが一番の印象です。
最初に述べたように、ライターの仕事を始めるのに資格は必要ありません。今すぐ誰でも名乗ることができます。極端なことですが、WEBでライティング(=文章を書くこと)をしたことがある、と言えばWEBライターです。(無くても名乗れますが)つまり、プロフェッショナルとして報酬が発生する仕事でなくても、個人ブログに数日書き込んだだけでもWEBライターです。
WEBライターが増えた背景として、無資格で誰でも名乗れるという以外に、スキルが比較的短期間で身につけられることがあると思います。SEO記事の制作はある程度の知識・経験が必要ですが「文章を書く」ということ自体は、普段から日本語でコミュニケーションをとっているわけで、また学生時代から文章を書くことは経験しています。そういった、「まったく文章を書いたことがないわけではない」ということが参入障壁の低さになっていると思います。
そして、需要と供給ではないですが、オウンドメディアが増え、また比較的低価格で案件を請け負うフリーランスライターの増加と、マッチングサイトの増加も背景にあると思います。
話は戻って、玉石混交になったことで「質の低いライターが増えた」という印象もあります。これは企業にとって大きな問題で、外部ライターに仕事を依頼する当社としても悩みどころです。では、飽和市場で質の高いWEBライターを確保するためにはどのうような戦略と方法が必要なのでしょうか。(ようやく本題)
WEBライターはなぜ増えた?
WEBライターがなぜ増えたかというのをもう少しお話しすると、書き手(働く人)が増えたという供給側でいうと、インターネット環境が整備されていることが当たり前になり、誰もがWEBライターとして活動できるようになったことが大きいと思います。副業解禁という流れもあり、ブログやSNSで気軽に発信できるようになりました。アフィリエイトブロガーなどを目指す人が増えたのも同様ですかね。PCとインターネット環境があればどこでもでき、かつ文章は誰でも書ける、ということで始めた人も多いのではないでしょうか。
どちらが先か、は分かりませんが「需要側」でいうと、記事制作の発注数も当然増えています。企業や個人がメディアを運営するようになり、アフィリエイトサイト、ブログの記事制作代行を依頼する企業・個人も増加しました。原稿制作にはそれなりに時間がかかるので「書いてくれる人」が求められるようになりました。
「著名人がSNSで発信した内容とそれに反応した人たちの声で構成されるWEB記事」も、原稿を書いているかというとなんともいえませんが、WEBライターのカテゴリーに含まれるでしょう。アクセス数を目的とした記事といわれますが、実際に多くのサイトでこのような記事が掲載されていることから需要はある以上、仕事としてなりたちます。これらの記事制作は、ライティングのスキルや専門性よりも、印象的なコメントを拾い上げるコツをつかみスピーディに仕上げるほうが求められる傾向にあります。量産しやすい記事ですので、ライターの数も必要になるというわけです。
質の高いWEBライターを確保するために大事なこと
そもそも「質の高いWEBライターとは?」ということですが、これはまた別の機会に書こうと思います。では、質の高いWEBライターを確保する前に決めておきたいことは、「自社はどのようなライターを求めているのか」です。どういった人にどんな原稿を書いてほしいか、ですね。それを企業・メディア、案件ごとに適切な基準とポイントを持つことが重要です。
ライターのポートフォリオなどを送ってもらい、発注前に面談をするなどで、ライターの得意な領域、人柄などを把握しておきたいところです。そして、お願いしたい仕事・分野と、ライターの得意領域が一致しているとベストでしょう。
ただ注意したいのは、過去の成果物としてライターが制作した掲載記事を提出してきたとしても、それが実際に本人がどこまで一人で書いたものなのか、は不明です。なぜなら、ライターが書き上げた原稿がWEBにそのまま掲載されるわけではありません。掲載までの間に編集者などのチェック・修正が入ります。実際に掲載された記事とライターが最初に上げてきた記事を見比べると、納品物としての記事の3割も残っていない、ということも珍しくありません。修正が多く入る理由は様々ですが、掲載されている原稿をそのままライターの技量と判断するのは危険です。
質の高いWEBライターを見つけるためにはどのような方法があるのか?
では、WEBライター探しの具体的な方法としては、なにがあるのでしょうか。最も手軽にアクセスできるのは、クラウド系のマッチングプラットフォームでしょう。サイト内で多くのWEBライターが自身のプロフィールやポートフォリオを公開してます。案件に発注も可能ですし、ライターとのやりとりもできます。サイトによっては「実績豊富」などライターがランク付けされているので、質の高いライターを見つけることができるでしょう。
ただ、当社はクラウド系のマッチングプラットフォームを活用していません。このブログは代表の私の個人ブログなのであくまで個人の見解ですが、当社として仕事をお願いする場合は、スキル・経験は大切ですが、まずその人のことをある程度知っておきたいと考えています。そのためできるだけ対面で一度はお会いし(最近はオンラインも)、お互いを理解したうえで仕事をする方針を取っています。クラウド系を利用したこともありますが、いろいろ検討した結果、対面でお会いできるライターさんのほうが気持ちよく仕事ができるな、という結論に至ったということです。もちろんクラウド系マッチングプラットフォームを否定するものではなく、レベルの高いライターさんも多くいます。
質の高いWEBライターの確保には長期的な戦略が必要
質の高いWEBライターはすぐに見つかるものではない、というのが私の考えです。マッチングプラットフォームを利用するにしても、すぐに見つかるとは限りません。そもそも、自社の案件を引き受けてくれるかも不明です。ただ、長期的に考えていくうえで大切なことがいくつかあります。
まずはWEBライターとのコミュニケーションです。さきほどの当社の方針と同じ感じですが、ライターさんとのコミュニケーションは重要です。案件における細かいやり取りや方向性、進捗状況確認、発注時の契約や金額の明確化など、お互いが気持ちよく仕事ができるようコミュニケーションを図りたいものです。逆に、そういうコミュニケーションをあまりとらないライターの場合、その人に長期的に依頼できるかどうかを見極める必要があるかもしれません。
なお、当社の場合ですが、ライターを見つける、発掘するよりも、育成する方に意識が向いています。具体的には、私が講師を務めるライター講座の受講生のなかから希望者に記事制作の仕事を発注し、納品物のフィードバックをしながら育成する方法です。
ライター講座の受講生ですので人柄はある程度、知っていますし、ライターさんも私のことを知ったうえで仕事に取り組んでくれます。ライター経験の浅い人向けの講座ですので、「質の高い」わけではありません。しかし、質はこれから上げられると思っています。そのため、当社の長期戦略は「知り合ったライターを育成する」ということになります。
求めるライターをWEBライター飽和時代に質の高いライターを確保するために
WEBライター飽和時代ですから、人を見つけるだけであれば特に苦戦することはないでしょう。人口減による労働力の確保が困難な昨今でこれ珍しいことといえます。しかし、質の高いWEBライターを見つけ、安定的に仕事を依頼できるかは別です。質の高いライターを見つけるために必要なことはまず、どのようなライターに仕事を依頼したいのか、です。依頼したい仕事と求める人材を明確にしましょう。
ライターの能力を「見極める力」も大切です。ライターが作成した原稿がそのまま掲載されるわけではありませんので、細かいヒヤリングでスキルや専門領域を把握しましょう。もちろん、お互いのためにすでにハイスキルであってもコミュニケーションを密にとることも欠かせません。そして、「育成」も視野に入れたいところです。長期的な戦略になりますが、自前で育成できれば、ライターに困ることはなくなるでしょう。